顔面神経麻痺とは
「顔面神経麻痺」とは、顔面神経が何らかの原因で麻痺し、顔が動かせなくなってしまう病気です。
顔を動かす表情筋は、左右に1本ずつある顔面神経によって動きます。右側の顔面神経が麻痺した場合は顔の右側が、逆に左側が麻痺した場合は顔の左側が動きにくい、または動かせない状態になります。
年間10万人に50人ほど発症しており、発症した2割以上の人に後遺症が残ると言われています。後遺症を残さずに完治するためにも、できれば発症から3日以内に受診し治療を開始することが非常に大事です。
もし「顔が上手く動かせない」という症状が現れたら、すぐに新潟市江南区のとがし医院(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)へご相談ください。
顔面神経麻痺の原因はストレスが関係!?
顔面神経麻痺が起こる直接の原因には、ウイルス感染、外傷、腫瘍などがあります。
ストレスが直接的に顔面神経麻痺を起こすわけではないですが、ストレスによって免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる可能性があります。よって、ストレスと顔面神経麻痺がまったく関係ないとは言えません。
顔面神経麻痺を引き起こす疾患
ベル麻痺
特発性顔面神経麻痺とも呼ばれ、顔面神経麻痺の原因としておよそ半数を占めており、最も多いです。
現在も原因はわかっていませんが、ヘルペスウイルスによる顔面神経の炎症が起きているのではないかと考えられています。
ハント症候群
水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化し、ウイルス性神経炎を起こして麻痺を生じます。ベル麻痺の次に多い原因疾患で、顔面神経麻痺の1~2割を占めます。
三大症状は顔面神経麻痺、耳痛、耳介の痛みを伴う水泡です。顔面神経に繋がる聴神経に炎症が広がると、難聴やめまいが起こります。
ベル麻痺よりも治りにくく、後遺症で麻痺が残る可能性は30%程度と考えられています。
外傷性麻痺
ベル麻痺、ハント症候群に続いて多い原因疾患です。事故などで外傷を受けた時に側頭骨を骨折すると、骨折した骨で顔面神経が圧迫されて麻痺が起こることがあります。怪我をしてから48~72時間以内に起こる即時性麻痺、それ以降に起こるものは遅発性麻痺と呼ばれます。
遅発性麻痺は、外傷の衝撃で起こる神経損傷のむくみが原因と考えられています。神経損傷の程度によるため、後遺症が残るかどうかは一概に言えません。
腫瘍性麻痺
耳下腺がんや中耳がん、外耳がんなどの悪性腫瘍で顔面神経が障害されると麻痺が起こります。良性腫瘍が原因でも麻痺が起こる可能性があり、顔面神経鞘腫や聴神経腫瘍によることもあります。
前兆はある?顔面神経麻痺の症状
- 顔がゆがむ
- 水分を口に含むと、口から漏れてしまう
- 眉毛が上がらない、下がりっぱなしになる
- 目が閉じられない
- 口角が下がる など
顔面神経麻痺が起こると、麻痺の程度は個人差があるものの突然症状が現れます。発症してから2週間程度ではっきりしますが、早期治療が重要なため「何かおかしい」と思ったらすぐに受診するようにしましょう。
顔面神経麻痺の検査
電気生理学的な方法のほか、顔を部分的に動かせるかどうか、麻痺の程度をスコア集計して評価します。
顔面表情筋スコア
柳原法(40点法)
国内の耳鼻咽喉科医や形成外科医がよく用いる方法で、顔面表情筋を部分的に動かして採点する方法です。
10項目の採点項目を0・2・4点の3段階、40点満点で評価します。
House-Brackmann法
海外でよく用いられ、元々は脳腫瘍の術後に顔面神経障害を評価するためのものです。
正常から完全な麻痺の状態まで、6段階で評価します。柳原法は20段階で評価するため、比較するとやや大まかな方法です。
電気生理学的検査 Electroneurography
顔面神経に電気刺激を与え、表情筋の動きを目安にして「どの程度の割合で神経が損傷しているのか」を電気生理学的検査によって調べます。検査の実施や結果の解釈には技術や慣れが必要ですが、世界的に最も信頼された回復見込みを予測する検査方法とされています。
顔面神経麻痺の治療
治療は、発症してからできるだけ早く薬物療法を実施し、症状が重度の場合は手術を行う場合もあります。
薬物療法
一般的に、神経の炎症を抑えるため発症してからできるだけ早くステロイド剤を投与します。プレドニゾロンを10日ほどかけて服用します。ハント症候群の場合には、抗ヘルペス薬をなるべく早く十分な量服用します。
手術
重度の麻痺の場合、顔面神経が圧迫され、損傷されていくのを食い止めるために「顔面神経減荷術」と呼ばれる手術をする場合があります。できれば麻痺が生じてから2週間以内に行えると最も効果的な治療なので、発症後早期で手術が可能と判断した場合にすすめられます。
当院では手術はおこなっていませんので、連携病院をご紹介します。
顔面神経麻痺のよくあるご質問
放置しても自然に治りますか?
症状が軽く、合併症が起こっていない場合は自然に治ることもあります。
しかし、症状が酷くなると完治まで時間がかかるようになってしまうため、初期段階での受診をおすすめします。
後遺症はいつから出てきますか?
おおよそ3~4ヶ月後、早いと発症から1ヶ月で現れる方もいます。
治療中に気をつけた方が良いことはありますか?
なるべく目を大きく開くようにし、目と口を一緒に動かさないように意識しましょう。
また、筋肉の萎縮を防ぐためのマッサージや、血行促進のために麻痺した部分を温めるのも効果的です。